大阪・釜ヶ崎の「ココルーム」にスタ☆タン!!がやってきた! ココルーム代表で詩人の上田假奈代、そしてさすらいのヴァガボンドとして現在ココルームに滞在しているテンギョウ・クラが、釜ヶ崎で暮らす人々がもつ「雑多な」オモシロさに着目し、突撃取材で紐解いてゆく。
【ココルームスタ☆タン!!〜その1〜】
日時:2020年12月2日・3日
場所:釜ヶ崎の色々な場所
審査員:上田假奈代、テンギョウ・クラ
出演者:あさやん「高倉健のモノマネ」
タケちゃん「嵐寛寿郎」
撮影:福田海渡
見所紹介:
●あさやんこと、浅田稔さん
人生に必要なものは映画から教わった。あるいは芝居から。あさやんも昭和の人だ。釜ヶ崎に暮らす人は土木建設の仕事をしてきた人が多いが、それだけではない。あさやんは営業や役者など、好きなことをいかして人生を渡り、釜ヶ崎に落ち着いて、ふだんは高倉健さんのように物静かで、ここぞ!という場面でみんなを喜ばせてくれる。あさやん劇場のカーテンコールはもうすこし先だ。(上田假奈代)
●タケちゃん
往年の名俳優、「アラカン」こと嵐寛寿郎を愛して止まないタケちゃんが、ココルームの庭に降り注ぐ木漏れ日の中、アラカン出演作品への思いを人情味あふれる語り口で伝えてくれています。アラカン愛が強すぎて、ついつい話題が行ったり来たりしちゃうタケちゃんですが、最後はしっかりアラカン作品「明治天皇と日露大戦争」から十八番の台詞を決めてくれました!(テンギョウ・クラ)
全体の感想:
日本の人口密度の丁単位でのトップと二位は大阪市西成区通称・釜ヶ崎にある。それほどに釜ヶ崎は人が多い。ということは、いろんな出自のさまざまな人がいる。ビルのような建物にホテルの看板がついている。並ぶ小さな窓ひとつひとつは3畳間。そこに一人で住まいする。国の政策で作られたような街で、圧倒的に男性が多いのも特徴だ。「釜のおっちゃん」は一括りにはできないが、それでも「ひとり」という存在の仕方は共通しているかもしれない。昔からLGBTQの人も多く住んでいたのは、「ひとり」の街だったからだろう。 「ひとり」に出会うために、そして、その存在が表されるようにと、ココルームは20年近く喫茶店のふりをして、釜ヶ崎芸術大学などを開いている。そんな怪しい場に来てくれるのは、やはり凄みのある人たちだった。動画におさめた数分ではお伝えしきれないのが残念だけど、彼らが生きているうちに(あと数年だと思う)、ぜひ会ってみてほしい。(上田假奈代)
釜ヶ崎はヴァガボンドの街だ。人は様々な事情でこの街に辿り着き、この地で新しい人生を得て、そしてこの地で終焉を迎えるか、人知れずこの街を去り、再び新たな土地を目指す。釜ヶ崎で暮らす人々は、同じよそ者同士、互いに無駄な詮索をせず、束の間の人間関係をこの街で築き、時に友情を育み、時に問題を起こし、「釜ヶ崎」という地図にない街に何かを見出しながら生きている。その釜ヶ崎の人に過去を語ってもらうということは、その人の釜ヶ崎という居場所に対する心の微妙なバランスを変えてしまうかも知れない危うさがあるかもしれない。しかし同時に、釜ヶ崎の人は、自分の歩んできた道を思い出し、誰かに対して語ることを欲しているようにも感じる。どのような境遇であろうと、人間というものは文字通り「人と人の間に生きる存在」なんだと、釜ヶ崎の人々を見ていると思い知らされる。「記憶の片隅にいるあの人」や「もう一度会いたいあの人」や「自分を受け入れなかったあの人」など。釜ヶ崎の人々は、それぞれの孤独を引き受けながら、今日も「心の中の誰か」との間で、この世界に存在している。
そんなことを感じさせられるスタタンZ!with ココルームだった。(テンギョウ・クラ)
【パートナー紹介】 ココルーム NPO法人こえとことばとこころの部屋とは 大阪・釜ヶ崎で表現と出会いの場をつくるべく活動しているアートNPO法人。2003年、大阪市の現代芸術拠点形成事業に参画し、いまはない新世界フェスティバルゲートで活動スタート。「表現と社会と仕事と自律」をテーマに喫茶店のふりをしながら、さまざまなであいと問いを重ねてきた。07年に市の事業は終了し、08年釜ヶ崎の端の動物園前商店街に拠点を移す。16年同商店街の南に移転し「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」を開く。
ウェブサイト→https://cocoroom.org/cocoroom/jp/