大阪・釜ヶ崎の「ココルーム」にスタ☆タン!!がやってきた!
ココルーム代表で詩人の上田假奈代、そしてさすらいのヴァガボンドとして現在ココルームに滞在しているテンギョウ・クラが、釜ヶ崎で暮らす人々がもつ「雑多な」オモシロさに着目し、突撃取材で紐解いてゆく。第三弾!
【ココルームスタ☆タン!!〜その3〜】
日時:2020年12月2日・3日
場所:釜ヶ崎の色々な場所
審査員:上田假奈代、テンギョウ・クラ
出演者:消しゴムさん「四国」
坂下範征さん(ゆたかさん)「はりえ」
撮影:福田海渡
見所:
●消しゴムさん
まるで消しゴムで消すかのようにそれまでの人生を一切捨て、四国の山中でひっそりミイラになろうとしていた時、偶然通った田んぼで分けてもらった塩むすびの味に心が震え、もう一度生きようと思い直したと言う消しゴムさん。孤独な自分を受け入れてくれた人々との出会いの末に命を繋ぎ、今釜ヶ崎で生きている消しゴムさんの物語を、風が吹き抜けるココルームの屋上からお届けします!(テンギョウ・クラ)
●坂下範征さん
いくつもの名前を持っている人。喋り出したら、絵巻物のような語り。アラジンの絨毯にのって飛んで行ってしまうのだが、必ずもとのところに戻ってくる。文学仲間だった奥さんを若くして病気で亡くし、その別れから場外人生を送ることに。まだ会えていない孫に、いつか届くように、と貼り絵の絵本をつくっている。ギンガムチェックのリボンのような線は、線路。この線路をたどってゆけば、魔法の絨毯への乗り換え駅につくよ。(上田假奈代)
全体の感想: 日本の人口密度の丁単位でのトップと二位は大阪市西成区通称・釜ヶ崎にある。それほどに釜ヶ崎は人が多い。ということは、いろんな出自のさまざまな人がいる。ビルのような建物にホテルの看板がついている。並ぶ小さな窓ひとつひとつは3畳間。そこに一人で住まいする。国の政策で作られたような街で、圧倒的に男性が多いのも特徴だ。「釜のおっちゃん」は一括りにはできないが、それでも「ひとり」という存在の仕方は共通しているかもしれない。昔からLGBTQの人も多く住んでいたのは、「ひとり」の街だったからだろう。 「ひとり」に出会うために、そして、その存在が表されるようにと、ココルームは20年近く喫茶店のふりをして、釜ヶ崎芸術大学などを開いている。そんな怪しい場に来てくれるのは、やはり凄みのある人たちだった。動画におさめた数分ではお伝えしきれないのが残念だけど、彼らが生きているうちに(あと数年だと思う)、ぜひ会ってみてほしい。(上田假奈代)
釜ヶ崎はヴァガボンドの街だ。人は様々な事情でこの街に辿り着き、この地で新しい人生を得て、そしてこの地で終焉を迎えるか、人知れずこの街を去り、再び新たな土地を目指す。釜ヶ崎で暮らす人々は、同じよそ者同士、互いに無駄な詮索をせず、束の間の人間関係をこの街で築き、時に友情を育み、時に問題を起こし、「釜ヶ崎」という地図にない街に何かを見出しながら生きている。その釜ヶ崎の人に過去を語ってもらうということは、その人の釜ヶ崎という居場所に対する心の微妙なバランスを変えてしまうかも知れない危うさがあるかもしれない。しかし同時に、釜ヶ崎の人は、自分の歩んできた道を思い出し、誰かに対して語ることを欲しているようにも感じる。どのような境遇であろうと、人間というものは文字通り「人と人の間に生きる存在」なんだと、釜ヶ崎の人々を見ていると思い知らされる。「記憶の片隅にいるあの人」や「もう一度会いたいあの人」や「自分を受け入れなかったあの人」など。釜ヶ崎の人々は、それぞれの孤独を引き受けながら、今日も「心の中の誰か」との間で、この世界に存在している。そんなことを感じさせられるスタタンZ!with ココルームだった。(テンギョウ・クラ)
【パートナー紹介】
ココルーム (NPO法人こえとことばとこころの部屋)とは
大阪・釜ヶ崎で表現と出会いの場をつくるべく活動しているアートNPO法人。2003年、大阪市の現代芸術拠点形成事業に参画し、いまはない新世界フェスティバルゲートで活動スタート。「表現と社会と仕事と自律」をテーマに喫茶店のふりをしながら、さまざまなであいと問いを重ねてきた。07年に市の事業は終了し、08年釜ヶ崎の端の動物園前商店街に拠点を移す。16年同商店街の南に移転し「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」を開く。
ウェブサイト→https://cocoroom.org/cocoroom/jp/