久保田翠が芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました
このたび、認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ理事長の久保田翠が「表現未満、実験室」ほかの成果により、平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。
2000年の設立以来、活動を応援して下さった皆様に心より感謝申し上げます。
贈賞理由は以下の通り。
久保田翠氏は,自ら設立した福祉施設等を拠点に,障害や国籍,性差,年齢な どあらゆる「ちがい」を乗り越えて人間本来の「生きる力」「自分を表現する力」を 見つめる場を提供し続けている。「表現未満、実験室」は,知的障害のある人た ちの表現をアートとして扱うことで,障害者の潜在能力や新たな可能性を提示し てきた活動を,浜松駅前のスペースで展開することで,人間とは何か,アートとは 何かという本質的な問い掛けを私たちにより強く投げ掛けるものだった。
詳しくは文化庁のサイトをご覧ください。
「平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞の決定について」http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/1401983.html
去る3月13日の授賞式には、久保田は息子の壮さんと共に出席しました。
久保田翠スピーチ全文
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認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ代表理事の久保田翠です。
この度は、芸術選奨芸術振興部門文部科学大臣新人賞といった大変光栄な賞をいただきまして誠にありがとうございます。
僭越ですが、私からスピーチをさせていただきます。
そこにいかにも場違いな人がいます。
彼は私の息子でくぼたたけしと申します。現在22歳です。
重度の知的障害者で、今でも、食事も、身辺の自立も、排泄も自分でできない人です。
今も入れ物に鍵を入れて打ち鳴らしていますが、これを彼は2歳頃から、今まで1日も欠かすことなく、ほぼ寝る時間意外にくり返し行っている行為です。
非常に音もうるさく、ご来場の皆さまも、なぜこの様な晴れがましい席に、こうした人がいるのだとお思いの方も少なくないと思います。本日はスタッフと共に同席させていただきたいと思います。
彼のこの行為は、学校や公共空間では「問題行動」ととれえられることが多いです。
しかし、障害があろうがなかろうが、人が毎日熱心に取り組んでいることを、そんな簡単に「問題行動」として切り捨ててしまってよいのだろうか、と私は思っていました。
この行為は、視点をかえれば、彼が最も熱心に行っている、彼の人格を現している、彼を表現している、行為だとも捉えることができるからです。
私の運営している障害福祉施設アルス・ノヴァは、こうした、本人が大切にしていることを、とるに足らないことと一方的に判断しないで、この行為こそが文化創造の軸であると考えています。
また、できる/できないといった能力で判断するのではなく、その人がそこにいることを、全肯定することから始めると、今の日本の社会の価値観やルールが果たして本当に正しいのだろうか、幸せにつながるのだろうかという問いかけにつながって行きました。
今回受賞しました表現未満、とは、
特別な力がある人が作る特別な行為ではなく、誰もがもちえる、自分を表す方法としての表現を大切にしていこうとするアートプロジェクトです。
今の世の中は分断や隔絶、孤立といった難しい課題を抱えています。だれもが生きづらさをかんじている、そんな時代です。
しかし、苦しい状況を、変えることは容易ではありません。
しかしそれでも人は生き延びていかなければならない。
その時に必要なのは、自分たちのこと、つらいことを笑いに変える、楽しいことに変える、そういった視点をかえる力です。
そういう力がアートにあると思っています。
障害の人にかかわらず、すべての人の、表現と言ってしまっていいかわからない、この、表現未満、な表れを尊重することは、その人の存在を認め、他者との関係を作っていくことです。
こうして、さまざまな分断を超えていく多様性が育まれていくことが私たちの願いです。
作品も作らない、高みを目指すわけでもない
障害のある人の存在と、障害福祉施設をひたすら社会に開く、それをアートを通して楽しく、おもしろく、プロジェクトにして、社会を揺さぶる
こうした活動を、このたび「芸術」として、認めていただきましたことは感謝申し上げるとともに、新しい時代が来たのだと心強く思います。
最後に、この様な評価をしていただきました関係者の皆様、レッツを応援して下さる多くの皆様、レッツのスタッフ、そして私の家族、に感謝いたします。
本日は大変ありがとうございました。
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