【スタッフ所感】 ゲスト:紺屋町の美容室 roccaさん [ちまちまトーク2024] - 特定非営利法人 クリエイティブサポートレッツ
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【スタッフ所感】 ゲスト:紺屋町の美容室 roccaさん [ちまちまトーク2024]

【スタッフ所感】 ゲスト:紺屋町の美容室 roccaさん [ちまちまトーク2024]

浜松に移住してきて半年以上、わたしは髪を切らなかった(というより切れなかった)。無論、自分では上手くできないし、美容院で自分の髪型について注文することが苦手だった。なんとなくこうなってほしいなという方向はあるのだけど、どう伝えたらいいのかも、自分に合っているのかも分からない。何より髪の毛というパーソナルな部分に触れられるひととは、それなりに安心した関係を築きたい。ぐずぐずしている間に、髪はぐんぐん伸びていく。そんな折、roccaの元木さんご一家が、たけし文化センター連尺町に「ここ何ですか~?」みたいなノリでふらっと立ち寄ってくれて、聞けば近所で美容院をされているというので、そのあとすぐにお店に突撃し、以来、わたしはroccaで髪を切ってもらっている。

 

roccaは、元木さんご夫妻が二人で営んでいる。ヘアカットは夫の潤さん、カラーは妻の千尋さん。もとは連尺町に店舗があったが、2023年12月にとなりの紺屋町へ住居ごと移転。庭や店内のレコードなど、密やかに詰まっている空間へのこだわりは主に潤さんのものであり、千尋さんは旅行など、ご家族とともに過ごす時間に想いを持っているようだった。そのへんの話もきっと豊かだったと思うのだが、進行役のわたしがうまくお聞きすることができず、トーク当日は美容師の仕事や美容院の役割についての話題に終始した。たまたま、体験実習でたけぶんに滞在していた高校生がトークに参加してくれていた。人生で一度も美容院で髪を切ってもらったことが無い、という彼が、トークの最後に「美容院に行ってみたいという気持になりました」と元木夫妻の目を見てはっきり伝えてくれたことが、この時間を物語っている。髪を整えることは、ココロを整えることである。

 

先日roccaさんに行ったとき、一年後くらい目指してロングにしたいんです~とポヤポヤした夢を語ったら、千尋さんに「一年だとセミショートくらいまでしか伸びないよ」とわたしの非現実的な理想をバッサリ切られて、笑ってしまった。なじみの美容師さんだからできるやりとりだなと嬉しくなった。歯医者、町医者、美容院…。身を整えるための”行きつけ”があることは、生活の証である。今年の春で、浜松での暮らしは四年目を迎える。縁もゆかりもなかったこの土地に、今ではいくつ”行きつけ”があるだろう。わたしはいま、ここで生きているのだなあと、しみじみ嬉しい。

(塚本千花)