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地域における文化事業は人を育むこと~スタ☆タン‼松山から考える

2016年より始まったスタ☆タン‼は「表現未満、」的なパフォーマンスを集めた発表の場をつくってきた。そしてコロナ禍においてオンライン上にその場をつくる(プラットフォーム)スタ★タン!!Z(2019~20年)を経て、2021年より全国のそれぞれの団体に現地で独自のスタ☆タン‼を行ってもらう形式に切り替えた。

レッツの中でのスタ☆タン‼というコンテンツは今年度は実施されていない。それは「表現未満、」をコンセプトとした音楽系の事業が法人内で次々と生まれている状況があるからだ。今は毎月1回たけし文化センター連尺町で行われている「玄関ライブ」や、地域づくりと連動して行う「クラブ・アルス」が展開されている。レッツでは、その時々の情勢や環境に合わせて、いろいろなコンテンツやメディアを開発することに重きを置いている。

松山文化ラボ(アートディレクター戸舘正史氏、プログラムオフィサー松宮俊文氏)が主体となった「スタ☆タン‼松山」は今年で3年目となる。そして2023年度をもって戸舘氏、松宮氏の松山文化ラボ事業は終わりとなる。その最後のスタ☆タン‼松山が3月10日に松山市で開催された。

本来のスタ☆タン‼はパフォーマーたちを公募し、それを評価する。つまり演じる人とそれを評する人がセットになっている。演者は自薦もあれば他薦ある。特に障害が重い人のその表現にはそれを愛でる人が必要となる。時には重度の障害者とともに舞台に上がり協働で発表する場合もある。スタ☆タン‼はこの「評する」ことによって他者性が担保される。つまり内輪のノリではなく、少しドライな関係性がある。2年間での延14か所でスタ☆タン‼は展開されたが、それぞれ独自のやり方が開発されていった。

その中でもスタ☆タン‼松山は全く独自の進化を遂げている。少々雑に言えば地域の「表現未満、」を愛でる人、発見する人を育成していくようなプログラムがそこに内包されている。これは主催する松山文化ラボが地域の文化振興を担っていることに起因する。文化は限られた人の限られたものではなく、人々の生活の中に息づいているものであり、それを共に楽しんだり、分かち合ったりを理解し実践できる人を増やしていく。そうした地道なプログラムがセットされている。そうした文化プログラムを体験した人々がスタ☆タン‼にも関わっている。時にはスタ☆タン‼を口実にいろいろな人たちが一緒に作業を行っていたのかもしれない。そして同時に、この場が皆にとってたいせつな「居場所」になっている。ここをよりどころとし、さらに次のステップに進む人もいればここで何かを実践、実験する人もいる。そうした場を支えているところがレッツとも通底する。

今居場所づくりはどこの地域でも盛んにおこなわれている。居場所の作り方も千差万別で、その中でも「文化」や個々の表現する力(やりたいこと、やり続けていること、大切にしているをもとにする)に注目して作る作り方がある。展覧会とも講座とも学びとも少し違う、目的のために何かやるのではなく、それぞれの自発性を促す取り組みは手間も時間もかかる。同時にこれこそがアーツカウンシルのような中間支援としてのまっとうな役割だなと思う。

しかし、諸事情があって松山文化ラボは今年度をもって形を変える。活動は6年というがその内2年半はコロナであった。人の育成は数値では見えない。イベントを打って人を集めたところで人が育つわけではない。自ら動きだそうとする人を育てるというのは本当に手間がかかる。そこを丁寧にすればするほど集客とは縁遠くなっていく。では芸術祭のような大イベントをやって人と注目を集めればいいではないかと言われるがそれこそ地域性がある。敏腕プロデゥーサーがいてもそれを支える市民性がない限り難しい。ましてや他の街からやってきたスタッフがそこの地域性や土着性になれるだけで1年や2年あっという間に過ぎてしまう。結果はもっと先に設定するべきだったであろう。

しかしこれもアートにはありがちで、2020年のオリンピック・パラリンピックが終わって、日本の文化政策の状況は変わってきた。これからもこうした動きが続々と生まれてしまうのかもしれない。現場の温度感とそれを管轄する組織(ほとんど行政)との乖離はどうしてもある。それを埋めることはやはりその組織の人でしかできない。

一方でレッツが勝手にできるのは、100%自主事業だからだ。やる意義があればやるしそうでなければやらないといった自分たちでジャッジできる環境がある。もちろんそれに合わせて資金も捻出していかなければいけないのだから、簡単そうに見えて結構大変なのだがそれでも義務ではない。そして何よりも文化やアートが持つ自由さや寛容性、楽しさをよりどころとし、それを社会に埋め込んでいきたいと考えているのであれば、自分たちが楽しくなければ誰が参加したい、一緒にやりたいと思うだろうか。

文化事業は何か目的を達成させるためにやるのではなく、良好な関係性をつくり出すため、あるいは何かを一緒にやり出すため、クリエイティビティを皆で発動させるためにあるのだと思う。そしてそうした環境が自分にあることが、豊かな時間、豊かな人生をつくり出していくのだと思う。(久保田翠)

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