「表現未満、」だらけな世の中～イタズラとくだらなさと信仰～深澤孝史さん（美術家）×新澤克憲さん（就労継続支援B型事業所ハーモニー）×田中純さん・益山弘太郎さん（ハーモニーメンバー）

「いたずら」ってなに？「くだらなさ」とは？身も蓋もない質問で、すみません。でもでも、突然「いたずら」や「くだらない」モノゴトに出会うと、そんなことを考えたくなるくらい、途方にくれたり、揺らいだりすることがあります。「とくいの銀行」や「おべんとう画用紙」などを手がける深澤孝史さん、「幻聴妄想かるた」を製作・販売するハーモニーの新澤さんとハーモニーのメンバー二人の計４人で「いたずら」や「くだらなさ」の姿を追いかけながら「信仰」の話まで、ガヤガヤと語っていただきます。

テーマ：「表現未満、」だらけな世の中～イタズラとくだらなさと信仰～
ゲスト：深澤孝史さん（美術家）×新澤克憲さん（就労継続支援B型事業所ハーモニー）×田中純さん・益山弘太郎さん（ハーモニーメンバー）
日時：2019年12月5日（木） 18:30～20:30
参加：無料（カンパ制）
場所：たけし文化センター連尺町

美術家。1984年山梨県生まれ。場や歴史、そこに関わる人の特性に着目し、他者と共にある方法を模索するプロジェクトを各地で展開。最近の主なプロジェクトは、《海をつなげる》「Reborn Art Festival 2019」（石巻、2019）、《Football Field for Buffalo》「Thailand Biennale2018」（クラビ、2018）、《かみまちハーモニーランド》「TURNLAND」（世田谷ハーモニー、2018）、《神話の続き》「奥能登国際芸術祭2017」（珠洲、2017）、常陸佐竹市》「茨城県北芸術祭2016」（常陸太田、2016）、《とくいの銀行》「取手アートプロジェクト」（取手、2011-）など。

１９６０年広島市生まれ。デイケアの職員、塾講師、木工修行を経て、１９９５年より、就労継続支援Ｂ型事業所ハーモニー施設長。記憶と記録、語りと言葉、そして人びとの居場所について関心があります。休日はパンクバンド「ラブ・エロ・ピース」のノイジーな難聴ギタリストとして活動中。著書「ソーシャルアート: 障害のある人とアートで社会を変える」（共著）　学芸出版社、「超・幻聴妄想かるた」（共著）やっとこ。他には、コトノネのサイトでコラムの連載中。

レポート

美術家の深澤さんと、東京都世田谷区にある就労継続支援B型事業所「ハーモニー」のお三方（施設長の新澤さん、メンバーの田中さん・益山さん）をゲストに開催された「手さぐりの表現未満、」の第5弾「表現未満、だらけな世の中～イタズラとくだらなさと信仰～」。ゲストのみなさんとホストのスタッフ水越とで、ワイワイがやがやと語られたトークの断片をレポートします。

まずは深澤さんからレッツ在籍時とそれ以降の活動を紹介。深澤さんは、「たけし文化センター」で取り組んだ「個人の熱意を認める公共施設」と、強い熱意がなくても一人一人を肯定する「表現未満、」という枠組みとの両方が同時多発的にあっていい、と語ります。それがハーモニーさんでもできていた、と言います。

信仰と公共性の交わるところ

新澤さんは、ハーモニーのメンバーたちそれぞれの膨大な量のエピソードを書き留めていました。メンバーそれぞれが、虐待体験など本人一人では受け止めきれないさまざまな現実があるなかで、「救いのためにもう一個の現実の世界を作っていた」ことを深澤さんは見つけ、それを相関図で表しました。同じ認識やルール、現実を共有するのではなく、それぞれが信じている現実が複数あって、それでも共在している。施設内で「信仰と公共性が交わるところ」が実現していた、といいます。

メンバーの田中さんは、自ら信仰を生み出す「教祖」ではなくて、教祖が教祖でいるようにする土台を作る存在、と深澤さんは言い表します。「聞き上手だねと言われる。ハーモニーの人は色々なことを言ってくる。訳が分からなくても、とにかく聞く」。

同じくメンバーで静岡出身の益山さんは、「静岡への首都移転計画」という自らの「信仰」を披露してくれました。「東京は国家国民ぐるみで東海静岡の情報を不当に削除しているために、首都機能を静岡市に移転してやるという活動をしている」。

新澤さんからは、「現場としては、色々な視点がある、ということをどんどん出していきたい。近所の人たちに届かずに、「変なことをやっている」となりかねない。みんながアパートを貸してもらえないんじゃしょうがない。本当にお隣につながっていくためにどうしたらいいのか、ということを考えている」という現場の視点からの言葉がありました。

複数の現実から語られる言葉、「表現未満、」を動画からぜひご覧ください。

（報告：佐藤航也）